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大阪高等裁判所 昭和51年(う)91号 判決

被告人 河崎初三

主文

原判決中被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役五月に処する。

この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

押収してある額字紙(「大牡丹印金」用)一組(当庁昭和五一年押第一四号の一六)を没収する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人奥村文輔、同金井塚修共同作成の控訴趣意書および同補述書記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官田口公明作成の答弁書および同補正書記載のとおりであるから、これらを引用する。

控訴趣意第一点 訴訟手続の法令違反等の主張について

論旨は、原判決には次のような訴訟手続の法令違反等がある。すなわち、

一、原判決が肯認した昭和五〇年五月一四日付訴因変更請求書(同書の日付欄は、空白であるが、検察官が請求した公判期日との関係から以下このように指称する)記載の予備的訴因は、刑訴法二五六条三項に違反して訴因の明示・特定を欠き、公訴の手続きがその規定に違反したため無効であるときにあたるから、公訴棄却すべきであつたのにこの挙に出なかつた原判決には不法に公訴を受理した違法がある。

二、右予備的訴因における袋帯の製造本数は約二七二本、販売本数三本であるのに、その製造本数約一四二本、販売本数一本のみを認定し、その余について判決していない原判決には、審判の請求を受けた事件について判決をしない違法がある。

三、昭和五〇年五月一四日付訴因変更請求書の本位的訴因(同一商標の使用)も予備的訴因(類似商標の使用)もともに、従来の商標法違反の訴因に不正競争防止法違反の訴因を追加するものであるところ、(1)右両法違反の各訴因の間に公訴事実の同一性がないこと、(2)不正競争防止法違反の罪の公訴時効がすでに完成していること、(3)昭和四三年一一月一九日の本件起訴以来六年半も経過した後に新たな主張・立証を要する不正競争防止法違反の訴因の追加的変更を求めることは憲法三七条の迅速な裁判の保障および刑訴法一条の刑訴法の基本目的に照らすと、正義に反し公訴権の濫用が明白であることなどいずれの点からも、右訴因の変更を許すべきでないのに、これを許容した原審の訴訟手続に法令の違反がある。

四、原判決はその冒頭に判事補が参与し審理したことを特記しているが、受訴裁判所の構成員でない参与判事補を参与させて審理することは刑訴法二八二条二項、裁判所法二六条、憲法三一条、三二条、三七条、七六条に違反するものであり、かかる違反の参与をさせた原審の訴訟手続に法令の違反がある。

というのである。

よつて、記録を精査して次のとおり判断する。

一、先ず、所論の一について検討すると、昭和五〇年五月一四日付訴因変更請求書の予備的訴因は別紙(一)のとおりであるが、これによれば同訴因(公訴事実)中被告人に関する不正競争防止法違反の点および商標法違反の点はそれぞれ包括して一罪であり、かつ各違反は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるとして訴因が構成されているところ、同訴因は犯罪行為一覧表を付し、共謀と単独の区分、商標の使用と商品の販売との区分、期間(日時)、場所、商標、商標権者、商品名、(冒用商標)犯行方法(商標織り込み、製織者、刺しゆうで商標縫い込み販売の相手方)数量等を個別的具体的に記載し、もつて不正競争防止法五条二号、一条一項一号および商標法七八条の各規定に違反する罪となるべき事実を、包括一罪、観念的競合犯として他の訴因を構成すべき事実と十分識別しうる程度に記載しており、訴因の明示、特定に欠けるところがなく、刑訴法二五六条三項の規定に違反するところはないと認められるから、右予備的訴因に基づき罪となるべき事実を認定した原判決には、所論のような公訴棄却すべきであるのに、これをしないで不法に公訴を受理した違法は認められない。

二、所論の二について検討すると、別紙(一)の予備的訴因における袋帯の製造本数は約二七二本、販売本数三本であるのに、原判決認定のこれに対応する本数はそれぞれ約一四二本と一本にすぎないことは所論のとおりであるが、(一)別紙の予備的訴因(犯罪行為一覧表を含む)と原判決の「罪となるべき事実」(別紙(二)の犯罪行為一覧表を含む)、「法令の適用」および「罪数等について」の説示を対照すれば、原判決は審判の請求を受けた訴因全部について審理したうえ、原判決の「罪となるべき事実」(別紙(二)の犯罪行為一覧表を含む)において判示の本数を認定し、その余の本数については、証明が充分でないがこれらは包括一罪の一部ゆえ無罪の云渡しをしなかつたもので、全訴因につき判決していること明らかであるから、原判決には所論のような審判の請求を受けた事件について判決しない違法は認められない。

三、所論の三について検討すると、記録によれば、(1)、昭和五〇年五月一四日付訴因変更請求書の本位的訴因(同一商標の使用)も予備的訴因(類似商標の使用。なお、本位的訴因と予備的訴因は本件の商標の使用が同一商標の使用にあたるか、あるいは類似商標の使用にあたるかの評価的構成が異なるのみで他は全く同一)もともに従来の商標法違反の訴因に不正競争防止法違反の訴因を追加するものであること所論のとおりであるが、右請求書の本位的訴因、予備的訴因および従前の商標法違反の訴因によれば、いずれも従前からの商標法違反の所為と追加部分にあたる不正競争防止法違反の所為は、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとでは重なり合つた同一の行為で社会的見解上一個のものと評価するのが相当であつて、刑法五四条一項前段にいう一個の行為にして二個の罪名に触れる観念的競合犯の関係にあるものと認められるから、従来の訴因と昭和五〇年五月一四日付訴因変更請求書の本位的および予備的各訴因の間には、公訴事実の同一性があること明らかであるし、(2)、の公訴時効(3)、の公訴権濫用の各主張については、これらを排斥した原判決の理由中「弁護人の主張に対する判断」の「二、不正競争防止法違反の訴因について」の(一)、(二)項(原判決書一七丁裏以下)における説示は懇切、的確であつて優にこれらを肯認することができる。

してみると、原判決には、所論のような訴因変更を許すべきでないのにこれを許容した訴訟手続の法令違反は認められない。

四、所論の四について検討すると、記録によれば、原審は、本件の審理に際し、昭和五〇年六月一九日判事補佐藤嘉彦を参与させる旨の決定をして、その第四二回および第四三回公判期日に同判事補を立ち会わせ、その第四四回公判期日に右決定を取り消していること、および原判決書前文中に同判事補が参与した旨記載されていることが認められる。

しかしながら、右参与判事補制度は、地方裁判所における審理に判事補の参与を認める規則(昭和四七年最高裁判所規則第八号)一条、二条に基づき創設されたものであつて、参与判事補の事件処理能力の修得向上を図り、あわせて一人制の裁判所の審理の充実強化を目的として、当該事件の記録及び証拠物の調査、主張と証拠の整理・検討、判例・学説の調査等事件処理上必要な事項に参加せしめようとするものであり、その審理への立会いは直接裁判所の審理にあずかり参加せしめようとするものであるけれども、それは受訴裁判所の構成員たる裁判官として参加するものでなく、参与判事補はその参加した事件に関し、その審理に立ち会い、記録、証拠物を調査して得た成果につき受訴裁判所の求めに応じて意見を述べ得るにとどまり、参与した事件について審判する独自の権限を有しないので、右意見は受訴裁判所の裁判官が判断を形成するうえでの参考に資するものにすぎず、事件の審判はあくまでも参与させた裁判官一人が公平かつ良心に従い独立して行ない、憲法及び法律にのみ拘束されるものであるから、参与判事補を事件の審理に参与させ審理に立ち会わせ、事件について意見を述べさせたからといつて、所論の如く地方裁判所の一人の裁判官で事件を取扱う旨を定めた裁判所法二六条一項、法律の定めた手続による公平な裁判所の裁判を受ける権利を保障した憲法三一条、三二条、三七条一項および裁判官の独立を規定した憲法七六条三項に違反するものとはいえない。

また、「公判廷は、裁判官及び裁判所書記官が列席し、且つ検察官が出席してこれを開くと規定する刑訴法二八二条二項は公判開廷の要件を定めたものに過ぎず、同項に規定する者以外の者が公判審理に立ち会うことを禁ずる趣旨のものと解せられない(なお司法委員をして審理に立ち会わしめうることを規定する民訴法三五八条の四参照)から、参与判事補を公判審理に立ち会わせることが所論の如く刑訴法二八二条二項に違反するものとはいえない。

してみると、参与判事補を審理に参与させ、審理に立ち会わせ、本件につき意見を述べさせることが所論のような訴訟手続の法令違反となりえないこと明らかである。

その他記録を精査するも原判決には所論のような訴訟手続の法令違反は認められない。論旨はいずれも理由がない。

控訴趣意第二点 事実誤認の主張について

論旨は、被告人は原判決の別紙犯罪行為一覧表の第一および第二の一ないし六の如く山内正博と共謀のうえ、あるいは単独で槇野博久(織工)、木村伊三郎(出機)、中元樹四郎(出機)、宮部初太郎(出機)らの製織者を使用し、または自ら刺しゆうして袋帯「大牡丹印金」「威毛錦」その他約一四二本につき、商標として右から横書きの「龍村平蔵製」を織り込み、縫い込んだ事実、並びに右一覧表の第二の七の如く商標として右同様「龍村平蔵製」と織り込んである袋帯一本を有償で譲渡した事実がいずれもないのに、これら織り込み、縫い込みおよび譲渡しを認定した原判決には事実の誤認がある、というのである。

よつて案ずるに、原判決挙示の関係各証拠によれば、被告人が別紙(二)の原判決添付の犯罪行為一覧表第一記載の如く山内正博と共謀のうえ、織工槇野博久を使用して袋帯「大牡丹印金」「威毛錦」約一二本について商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を織り込んだこと、右一覧表第二の一ないし四記載の如く単独で、出機の製織者木村伊三郎、同中元樹四郎、同宮部初太郎および織工槇野博久を使用して袋帯「四天王文棋」「大牡丹印金」その他計約一二八本につき商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を織り込んだこと、右一覧表第二の五、六記載の如く、被告人自ら袋帯「天平狩猟文」「豊公芒文錦」計二本につき商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を刺しゆうで縫い込んだこと、および右一覧表第二の七記載の如く後藤直平に対し袋帯「四天王文棋」に商標として右から横書きで「龍村平蔵製」と表示(織り込みか縫い込みかについては後述する)されているもの一本を有償で譲渡したことを優に肯認することができる。

ところで所論のうち主要なものにつき若干の説示を付加すると、

1.所論は、山内正博の捜査官に対する供述調書は、捜査官に迎合し、自己の刑責を軽くするため事件に全く関係のない被告人を巻き込み、全く虚偽を述べたものであつて、被告人は本件の山内と共謀とされる犯行と全く無関係であると主張するけれども、参考人として取調べられた槇野博久の検察官に対する供述調書五通(記録九三八丁以下)、同じく山内千代の検察官に対する供述調書四通(記録九六五丁以下)同じく山内鉄蔵の検察官に対する供述調書二通(記録九九〇丁、九九五丁)原審証人山内英子の供述(記録三九四丁)、同じく山内千代の供述(記録四五五丁)に照らすと、山内正博の検察官に対する供述調書五通(検甲一四〇号、一四二号、一四四号、一四八号、一五〇号。記録一二三二丁以下および一二五四丁以下)は、自然かつ合理的で右各参考人の検察官に対する各供述調書および右原審各証人の各供述とも符号して信用性が認められ、これらの各証拠によれば、別紙(二)の原判決添付の犯罪行為一覧表第一の点について、被告人は山内正博と共謀のうえ犯したものであることが十分認められる。所論は採りえない。

2.所論は、原判決の犯罪行為一覧表第二の一につき、原審証人木村タカの供述その他に照らしても、被告人は木村伊三郎に右第二の一の当時袋帯を織らせ、「龍村平蔵製」の商標を織り込ませたことは全くない旨主張するが、証拠(略)によれば、右一覧表第二の一の点は十分に認められ、同人の妻原審証人木村タカの所論の供述部分は、同女が以前被告人のもとで織工として働いていたため、その面前でありのままに供述することをはばかつたためか、その内容がまことに不自然、不合理で措信しがたいから、所論は採りえない。

3.所論は、原判決の犯罪行為一覧表第二の二につき、原審証人中元樹四郎の供述に照らすと、同人の検察官に対する供述調書の特信性の情況的保障はなく、原審は採証を誤つていると主張するが中元樹四郎は被告人から製織の仕事を貰う出機であつて、被告人の面前で同人に不利益なことを述べにくい事情があるうえ、参考人としての中元樹四郎の検察官に対する供述調書二通(記録九二一丁以下)は具体的かつ詳細で合理的に述べられているのに、同人の原審公判廷における供述は、「被告人に頼まれて龍村平蔵製という文字を入れたことは、はつきり覚えていません」というあいまいなものであるばかりでなく、検察官面前調書作成時の読みきけは自分に関係ないと思つて聞いていなかつた旨など不自然、不誠実な供述をしていてたやすく措信しがたいのに対し、同人の検察官に対する供述調書には真実を述べがたい事情がなく、具体的かつ詳細で合理的、自然的に述べられているから、これを信用すべき特別の情況があつて証拠能力が認められるばかりでなく、迫真性があつて信憑力が十分認められ、原判決の右第二の二についての採証、認定に誤りはない。所論は採りえない。

4.所論は、原判決の犯罪行為一覧表第二の三につき、原審証人宮部初太郎の供述に照らすと、同人の検察官に対する供述調書には特信性の状況的保障も信憑力もないと主張するが、同人も前記中元と同様被告人から製織の仕事を貰う出機であつて、被告人の面前で同人に不利益なことを述べにくい事情があること、宮部の原審公判廷における供述はあいまい、不自然、不誠実であるのに対し、同人の検察官に対する供述調書(記録九三二丁)は具体的かつ詳細で合理的、自然的に述べられており、これを信用すべき特別の情況が認められるばかりでなく、迫真性があつて信憑力が十分認められる。所論は採りえない。

5.所論は、原判決の犯罪行為一覧表第一および第二の四につき、原審証人槇野博久の供述に照らすと、同人の検察官に対する各供述調書には任意性および信憑性について強い疑問を否定することはできない旨主張するが、同人の検察官に対する供述調書五通(記録九三八丁以下)は、いずれも身柄拘束などされていない参考人として述べたものであり、署名指印の存在、自ら自己作成のノートを持参して供述していることに徴して、その任意性は十分に認められ、同人の原審公判廷における供述は肝心の所では、古いことで、はつきりわからないという答えを連発し、あいまい不自然であるのに対し、同人の検察官に対する供述調書五通の記載内容は、自ら持参したノートあるいは押収物、その他に基づき具体的かつ詳細で合理的、自然的に述べられており、山内千代、山内鉄蔵の各検察官に対する供述調書、原審証人山内英子、同山内千代の各供述とも符合し、迫真性があつて信憑力は十分認められる。所論は採りえない。

6.所論は、原判決の犯罪行為一覧表の第二の五、六、七につき、それらの袋帯はいずれも後藤直平が被告人より買い取り後、自己の客に頼まれて龍村平蔵製という縫い込みを依頼し、被告人が長房某なる刺しゆう屋に取り次いで縫い込みができたもので、原判決の認定と事実関係が異るのみならず、取り次ぎにすぎない被告人に商標法違反の犯意はなかつた旨主張するが、原判決挙示の右第二の五、六、七関係各証拠によれば、被告人は、別紙(二)の原判決添付の犯罪行為一覧表第二の五、六の如く被告人から袋帯を買い取つた帯商の後藤直平に「龍村平蔵製」のネーム入れを頼まれ、袋帯「天平狩猟文」「豊公芒文錦」各一本にそれぞれ自宅で自ら商標として右から横書きで龍村平蔵製と刺しゆうで縫い込んだこと、および右一覧表第二の七につき昭和四三年九月二八日ころ自宅において、後藤直平に対し、かねて、被告人において製織し、商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を刺しゆうで縫い込んであつた袋帯白地「四天王文棋」一本(当庁昭和五一年押第一四号の二三)を、その事情を知りながら、有償で譲渡し、さらに僅か五日後の同年一〇月三日ころ後藤はこれを佐原某女に販売したことが認められる。ところで原判決の右一覧表第二の七は「龍村平蔵製」を織り込んだもの一本と判示し、右のように「龍村平蔵製」を刺しゆうで縫い込んだもの一本とは判示していないが、この誤りは他人の登録商標に類似する商標を表示する物を有償譲渡した行為を違反行為とする本件においては、罪名、罰条さらに関係法条はもちろん違反行為の性質、態様等に影響を及ぼさぬ些細な誤りにとどまることが認められる。

してみると、別紙(二)の原判決の犯罪行為一覧表第二の五、六、七の点については、第二の七の右「織り込んだ」とした誤り以外は原判示のとうり肯認でき、「龍村平蔵製」を自ら刺しゆうして縫い込み、あるいは被告人において製織した袋帯で「龍村平蔵製」を縫い込んである事情を認識しながら有償で譲渡した。被告人には商標法違反および不正競争防止法違反の犯意に欠けるところはなく、また右の「縫い込んだ」とすべきところを「織り込んだ」とした誤りは到底判決に影響を及ぼすこと明らかな事実の誤認とは認められない。所論は採りえない。

なお、所論は、控訴趣意補述書第二点中において、原判決別紙一覧表第一、第二の一ないし四につき、違反商品を製造したのは、織工、出機であるから、被告人に対しては商標法八二条の両罰規定により罰金を科すべきであるのに、懲役刑に処した原判決は、事実の誤認、法令の解釈適用の誤りがあると主張するけれども、原判決挙示の関係各証拠によると、被告人は織工、出機(製織者)を「自己の道具として利用して」(以下単に「用いて」とあるのは同趣旨)本件袋帯を製造したと認められ、原判決の記載もこれと同旨に帰するといえるから、被告人に対して行為者が犯行を犯した場合の事業主の監督不行届責任を問う商標法八二条を適用する事実関係はない。

その他記録を精査するも、原判決には所論のような事実の誤認は認められない。論旨は理由がない。

控訴趣意第三点 法令適用の誤り等の主張について

論旨は、原判決には次のような法令適用の誤り等の違反がある。すなわち、

一、原判決は別紙犯罪行為一覧表第一および第二の事実につき、商標権の侵害を認めて商標法七八条、二条三項、三七条一号・四号・五号を適用処断しているが、

1.「株式会社龍村美術織物」という法人が製造した袋帯に「龍村平蔵製」として龍村平蔵個人が製造した如き商標を表示するのは、商標の表示と商品の関係が一致せず、商品の出所を混同する結果を生じるから、右商標は現行商標法(昭和三五年四月一日施行)四条一項一五号・一六号により商標登録を受けることができないもので、右会社の取得登録は無効であり、かかる無効な登録商標に関する侵害はありえない。

2.本件登録商標「龍村平蔵製」は縦書きであるが、商標権者の龍村平蔵、株式会社龍村美術織物および有限会社龍村本社らが縦書きの登録商標を指定商品に使用したことがないところ、商標は商号と異なり商品の同一性を表わすものであるから縦書きと横書きの商標はその性質からいつて截然と区別されなければならず、横書きのものについて保護を受けようとする場合は横書き商標を登録すべきであり、被告人が横書きの「龍村平蔵製」を使用したからといつて、本件登録商標を使用したものとはいえない。

3.本件登録商標の商標権は、龍村平蔵個人が昭和一二年以降これを有していたものであるところ、昭和二三年以降は、右登録商標の指定商品の製造・販売をしたのは龍村織物株式会社、ついで設立された有限会社龍村製織所などの法人であり、右商標権は昭和二三年に龍村平蔵の手を離れているうえ、右商標を使用していた右株式会社が昭和二七年事実上倒産し、ついで右有限会社が昭和二九年に倒産したのであるから、旧商標法一四条一号により龍村平蔵が三年以上その商標を使用しなかつたため右商標の登録は取消されるものであり、かつ旧商標法一三条により遅くとも右有限会社が倒産して営業を廃止した昭和二九年の時点で右商標権は消滅したものである。

4.(1)旧商標法一二条によれば、商標権はその営業と共にする場合に限りこれを譲渡することを得る旨明定されていたから、営業を有しない者は商標権を移転することができないこと明らかであるところ、本件についての商標原簿上龍村平蔵は昭和三一年一二月一日株式会社龍村美術織物に商標権を譲渡したことになつているが、それに伴う営業の譲渡のないことは証拠上明らかであること。また(2)新らしく設立される株式会社が他から財産引受(営業譲渡を含む)をしようとする場合は、商法一六八条一項六号により、原始定款にその財産、その価格および譲渡人の氏名を記載すべく、これに反する財産引受は無効であるところ、龍村平蔵から営業譲渡を受けたとされる株式会社龍村美術織物の原始定款にはその旨の記載がなされていないから右財産引受(営業譲渡を含む)は無効であることなどに徴し、龍村平蔵から株式会社龍村美術織物への商標権の移転は無効である。

5.仮りに、右1ないし4の取得登録の無効、登録商標の不使用、商標権の消滅、商標権移転の無効などにつき、商標法四六条、五〇条(旧商標法一四条、一六条、二二条)等による商標登録の無効または取消の審判がなされていないため、本件当時本件商標権は原判示法人がこれを有していたものというほかないとしても、商標権に重大な瑕〓が存し、かつ詐欺の行為(商標法七九条、旧商標法三五条一項)により龍村平蔵から株式会社龍村美術織物へ商標の移転登録がなされたものであるから本件事犯につき可罰的違法性はない。

というべきであるから商標権の侵害罪の成立を認めた原判決には法令の解釈適用の誤りがある。

二、原判決は不正競争防止法違反の罪の成立を認めて同法五条二号、一条一項一号を適用処断したが、

1.同法五条二号の規定に違反する罪は不正競争の目的を有することは要件である以上、何よりも不正手段による利益の有無が問題とされねばならず、その利益がなければ不正競争の目的はないといわねばならないところ、本件では原判示商標を使用したことにより、被告人は利益を得た事実がないから不正競争の目的はない。

2.原判示別紙犯罪行為一覧表中第一および第二の一ないし四の袋帯約一四〇本につき、原判決はその製造を認めたのみで販売、拡布、輸出等の対外的行為の認定が伴わないこと明らかであるところ、かかる製造のみをもつてしては、いまだ不正競争防止法一条一項一号にいう「他人ノ商品ト混同ヲ生セシムル行為」をなした(未遂処罰の規定はない)ものとはいえない。

というべきであるから同法五条二号・一条一項一号の規定に違反する罪の成立を認めた原判決には法令の解釈適用を誤り、ひいて事実を誤認した違法がある。

というのである。

よつて、記録および当審における事実調の結果を検討して次のとおり判断する。

一、商標法違反の点について

所論一の1について

よつて、審究するに、原判決挙示の関係各証拠および当審証人小野修市の供述によれば、指定商品被服等に付する「龍村平蔵製」なる商標は、同人が織物等につき研究、復原、開発した美術的図案・意匠、技術・品質等を有する商品であることを示すことに商標の価値があるもので、この商標が「龍村平蔵製」とあるゆえをもつて一般の商標の場合と異なり、その商標権は龍村平蔵個人から他人へ譲渡することができないものと解すべき合理的理由がないところ、株式会社龍村美術織物は後記説示の如く昭和三一年一二月一日龍村平蔵から右商標権等をその営業と共に譲り受け、同三二年四月一八日その取得登録を受け、龍村平蔵の美術的図案・意匠・技術・品質等並びに営業を継承して袋帯その他を製造し、これに「龍村平蔵製」なる商標を使用しているものであり、他方営業と共に商標権を譲渡した龍村平蔵はその商標の使用およびその営業を廃止していることが認められ、所論の現行商標法四条一項一五号、一六号に違反する商品の出所の混同および商品の品質の誤認を生ずるおそれがある無効な商標登録といえないから、所論は採りえない。

所論一の2について

思うに商標法二条一項によれば、商標は業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用するものであり、「龍村平蔵製」なる商標は商品の主体を表示しているから、縦書きの「龍村平蔵製」なる登録商標に対し商標として横書きの「龍村平蔵製」を使用することは、商品の主体につき混同を生ぜしめるおそれがある登録商標に類似する商標の使用であること明らかで商標法三七条一号の規定に違反する侵害行為とみなす行為にあたると認められる。なお、原審証人龍村徳、同小野修市の各供述および押収にかかるパンフレツト、名物裂利休緞子一部、極札一枚、名物裂包紙三枚、包装紙一枚(当庁昭和五一年押第一四号の三四ないし三七)によれば順次継承の商標権者である龍村平蔵、株式会社龍村美術織物および有限会社龍村本社らは、所論のとおり袋帯自体に縦書きの「龍村平蔵製」なる商標を使用したことがないとしても、袋帯の容器である桐箱の箱書き、箱の中に袋帯とともに納める解説書、包み紙などには登録どおりの縦書きの「龍村平蔵製」を使用してきたし、現在も使用中であることが認められるから、商標法二条一項、三項一号、三号により登録商標と同一の商標の使用が商標権者によりなされていること明らかである。所論は採りえない。

所論一の3について

先ず商標権者の三年以上商標不使用の点は、旧商標法一四条一号、二二条一項(現行商標法五〇条一項)によれば、商標登録の取消しは審判を経てはじめてなされるものであるから、商標不使用があつても審判で取り消されぬ限り商標権は有効に存続するものであり、また右取り消しの審判は商標権者がその登録商標を現実に使用していないことに対する制裁であるから、たとえ不使用三年以上経過後であつても原商標権者またはその譲受人らが使用しはじめている限り取り消しの請求は許されないと解される(大審院大正一五年四月二日判決、民集五巻二四六頁。現行法五〇条四項)ところ、記録および当審における事実調の結果によるも商標登録取消しの審判の請求および審判がなされたことはいずれも認められず、却つて前記所論一の2についての説示の如く、使用していることが認められるから、所論のような龍村平蔵の登録商標不使用による商標権消滅の所論は採りえない。

次に商標権の営業の廃止による消滅の有無について案ずるに、商標法における営業とは、商法上の営業の如く営業者の一定の営業目的について組織化された企業を意味するものでなく、その指定商品を単位として考えられるべく、かかる商標権によつて表彰された指定商品を単位とする営業を指称するのであつて、商標権者がこの意味の営業を廃止した場合、これに対する商標権が当然に消滅し、これについて抹消登録手続その他の処分行為を必要としないと解せられる旧商標法一三条にいう「営業の廃止」とは、営業の廃止の事実および時期の明確性の要請等から(1)商標権者が一般取引先に対してその営業を廃止する意思を表示し、かつ、その意図のもとにその営業を中止した場合とか、あるいは(2)商標権者が営業廃止について明示的な意思表示はしていないが、その営業を事実上中止しており、しかもそれが営業廃止の意思に基づくものと客観的に認識される情況にある場合を指すものと解するを相当とするところ、原判決挙示の各証拠なかんずく原審証人龍村徳、同小野修市の各供述によれば、龍村平蔵はその一生を美術織物の完成に捧げた人物であつて、昭和一二年本件商標を登録後、第二次世界大戦中はもとより終戦直後の窮迫した困難な経済状勢下を含めて、一時たりともその美術織物等の営業を廃止する意思を一般取引先に対して表示したことはなく、かえつて自己が研究、復原、開発、発展させた製織技術を根拠とする営業を、子々孫々まで継受させるべき家業(家業の延長としての法人を含む)として維持してゆくため種々腐心してきたものであること、また同人は昭和一八年に製織技術の改善開発とその製品化を目的とした龍村織物美術研究所(個人)を設立し、昭和二三年の龍村織物株式会社設立後もこれを存続させていたばかりか、昭和二八年三月には織宝苑タツムラシルクマンシヨン(個人)を設立して拡大発展を期し、これらの業務の基本的な事項や技術面などについては、昭和三七年四月死亡直前まで自ら采配をふるい、息子達や従業員を指導監督し、指定商品被服等に付する本件登録商標関係においては、昭和三一年一二月一日これを株式会社龍村美術織物に譲渡移転するまで製品に対する責任を負つていたこと、図案、指図、設計、紋紙、見本裂、配色、染色、加工、検査など本来分業形態をとる本件登録商標を付する指定商品被服(袋帯)等の製織を、昭和二三年の龍村織物株式会社設立以前は右研究所直轄の御霊、北野両工場で一貫して行つていたが、右会社設立以後は右両工場を右会社およびその後に設立された各会社に順次貸与して製織させ、仕上がりを検査のうえ、本件登録商標を付した製品を市販することを承認するという一部分業化を図つたもので、龍村平蔵(右研究所および右織宝苑を含む)の本件登録商標関係の営業は、右株式会社龍村美術織物へ譲渡移転するまで継続していたことが認められ、これらによれば本件商標権が昭和二三年龍村平蔵の手を離れたことは認められず、龍村織物株式会社、有限会社龍村製織所の各倒産は龍村平蔵の営業の廃止を来すものでなく、所論のような営業の廃止を理由とする商標権の消滅は認められない。所論は採りえない。

所論一の4について

原判決挙示の判示全事実関係の各証拠および当審証人小野修市の供述並びに原審証人森金次郎の供述によれば、本件登録商標「龍村平蔵製」および同商標の指定商品関係の営業につき、かねてから自己の営業を息子達ないしはその経営する法人に継受させたいと考えていた龍村平蔵は、昭和三〇年一二月三日設立した株式会社龍村美術織物(代表者龍村徳)に金融機関の協力もあり、その将来性について見通しが立つに至つたので、昭和三一年一二月一日右商標権並びに見本裂、参考品、指図、製品見本、記録、紋紙などの技術および得意先を譲り、本件商標権とその営業を譲渡し(記録一二八九丁以下、一四三六丁、一八五五丁、一八六一丁)、翌三二年四月一八日右株式会社がその商標権の取得登録を受けたこと、株式会社龍村美術織物の昭和三〇年一二月三日現在(設立当時)の貸借対照表(記録一八六六丁)の固定資産の欄に「紋紙二〇〇万円」、同三一年七月三一日現在の第一期確定財務諸表の固定資産の欄に紋紙三〇〇万円」とあるが、製織は図案、指図、設計、紋紙、見本裂、配色、染色、加工、検査などの分業形態をとつているものであつて、紋紙はそのうちの一つに過ぎず、西陣の常識からすれば消耗品で単にボール紙に穴をあけたもの(記録一四四八丁)で指図などに比べて価値の低いものであるが、龍村平蔵の作品の場合には流行に関係がなく永年使用が可能なこと、紋紙の枚数が通常の名古屋帯の数倍から一〇倍の量になることなどから、消耗品と考えず評価の問題が生じたのであり(記録一四四九丁)龍村平蔵の指導監督の下で新たに製造販売を分担することになつた右会社が、この紋紙を前に同じく平蔵の指導監督の下で製造販売していた有限会社龍村美術織物から譲り受け、これを評価して固定資産として計上することはもつともなことであり、これは、紋紙だけの譲り受けで譲り渡したのは、商標権者でない右有限会社であるから、右固定資産の欄における紋紙の評価をもつて本件商標権およびその営業の譲渡があつたとは短絡できないことが認められ、これらによれば、龍村平蔵から株式会社龍村美術織物に対し会社設立後本件商標権はその営業と共に移転されたものであり、その営業の譲渡は商法一六八条一項六号の会社設立時の変態設立事項にかかる財産引受にあたらないから、原始定款にその記載のないのは当然であり、所論のように本件商標権の移転(譲渡)が無効であることは認められない。

もつとも原審証人龍村徳は、「商標権その他一切、参考品、紋紙その他製造販売に必要な一切のものを有限会社から株式会社へ譲り受けているという中の一つにすぎないわけです」(記録一四三六丁)と述べるなど株式会社龍村美術織物設立の際に有限会社龍村美術織物から本件商標権が譲渡されたかの如き印象を与える供述をしている部分があるけれども、引き続く供述では「商標は、株式会社になりましてから譲り受けたと思います。……株式会社になつてこれでいよいよ行こうということに確定したので商標も譲り受けたということになつていたかと思います」(記録一四三六丁)と述べ、あるいは別のところでは、この商標は昭和三一年一二月一日(株式会社設立の約一年後)株式会社龍村美術織物が平蔵から譲渡を受けたもので父が判断して譲渡したものと思う旨(記録一二八九丁以下)述べており、これに原審並びに当審証人小野修市の各供述および昭和三二年四月六日付商標権移転登録申請書(添付書類を含む)の謄本(記録一三二五丁)をあわせ考えると、右の株式会社設立の際右有限会社から本件商標権が譲渡されたとの供述部分が、厳密に整理区分しないまま間違つて供述しているものと認められ、真実に合致した供述部分とは考えられない。所論は採りえない。

所論一の5の可罰的違法性がないとの主張について

所論については前記各説示の如く、そもそも本件登録商標「龍村平蔵製」は株式会社龍村美術織物が商標登録を受けることができない商標ではなく、商標権者は縦書きの「龍村平蔵製」なる登録商標と同一の商標を使用してきており、商標権を消滅せしめる営業の廃止はなく、営業と共になした商標権の移転についての無効事由も認められなく、所論のように商標権に重大なる瑕疵が存するが、ただ商標登録の無効または取消の審判がなされていないために、商標権は原判示法人がこれを有していたとされるにすぎない事案ではなく、記録および当審における事実調の結果によるも、詐欺の行為により龍村平蔵から株式会社龍村美術織物へ商標の移転登録がなされたことは到底認められないから、所論の可罰的違法性がないとの主張はその前提を欠き採りえない。

その他記録を精査し当審における事実調の結果を検討するも、原判決には商標権の侵害罪の成立を認めた点につき、所論の意味における法令解釈の誤りは認められない。

二、不正競争防止法違反の点について

所論二の1について

思うに不正競争防止法五条二号にいう「不正ノ競争ノ目的」とは、公序良俗、信義衡平に反する手段によつて、他人の営業と同種または類似の行為をなし、その者と営業上の競争をする意図をいい(最高裁判所昭和三五年四月六日判決、刑集一四巻五号五二五頁参照)、不正手段によつて営業上の競争をする意図は経済上の利益を追求する意思を含むが、あくまで意図であり、同法五条二号の規定に違反する罪は、不正競争の目的をもつて同号所定の行為をなしたことによつて成立するのであつて、結果としての利益の有無は犯罪を構成する事実自体に含まれないことその法条に照らして明らかであるところ、原判決挙示の関係各証拠によれば、被告人に関する原判示事実(別紙(二)参照)の山内正博と共謀または単独で、各製織者を用いて製織した袋帯合計約一四〇本に商標として横書きで「龍村平蔵製」を織り込んで商品として製造した行為、被告人がさきに製造販売した袋帯合計二本に取引先商人の後藤直平の依頼により商標として横書きで「龍村平蔵製」を縫い込んだ行為、および自己の製品に商標として横書きで「龍村平蔵製」と縫い込んである袋帯一本を右後藤直平に有償譲渡(販売)した行為は、自己の製品、販売品にそのすぐれた美術的格調、技術・品質等と名声のゆえに高級織物として著名な龍村製品と混同を生ぜしめる「龍村平蔵製」なる表示をなし、あるいはかかる表示ある製品を販売し、一般消費者をして被告人の右製品、販売品を高級織物として著名な龍村製品であるとの誤認を生ぜしめるものであること、および右表示をすることあるいは右表示ある製品の販売が公序良俗、信義衡平に反する営業手段であることを知りながら、この表示をすることおよびこの表示ある商品を販売することによつて、袋帯等の製造販売業の被告人が自己の商品につき有利に売上げを増大させる意図(被告人がさきに製造販売した袋帯二本に取引先商人後藤直平の依頼により商標として「龍村平蔵製」を縫い込んだ行為も、継続的取引の相手の依頼に応じ、この行為自体によつて今後の自己の商品の有利な売上げ増大を意図する行為と認められる)で、有限会社龍村本社および株式会社龍村美術織物と営業上の競争をする意図があつたことが認められ、被告人に不正の競争の目的があつたこと明らかである。所論は採りえない。

所論の二2について

原判示犯罪行為一覧表(別紙(二)参照)中第一および第二の一ないし四の袋帯約一四〇本につき、原判決はその製造段階までのみを判示していること所論のとおりであるが、不正競争防止法一条一項一号は本法施行の地域内において広く認識される「他人ノ……商標……ト……類似ノモノヲ使用シ又ハ之ヲ使用シタル商品ヲ販売……シテ他人ノ商品ト混同ヲ生ゼシムル行為」「ヲ為ス者アルトキハ之ニ因リテ営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者ハ其ノ行為ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得」と規定し、類似商標の使用自体で商品の販売と同様に他人の商品と混同を生ぜしめる行為となりうること、および混同行為は営業上の利益を害せられる虞れの段階で把握しうることを規定しているものと解されるところ、原判決挙示の関係各証拠によれば、被告人が共謀または単独で各製織者を用いて製織した袋帯に商標として横書きで「龍村平蔵製」を織り込んで袋帯約一四〇本を製造した行為は、すでに他人の登録商標(縦書きで「龍村平蔵製」)と類似の商標を使用したこと(商標法二条一項、三項一号参照)にあたるのみならず、袋帯等の製造販売業を営む被告人が製織者を用いて製織した袋帯に商標として横書きで「龍村平蔵製」を織り込んで製織を完了した以上商品たる袋帯として出来上り、あとは製織者から直接に、あるいは共謀者山内正博を通じて被告人に袋帯が届けられ、製造販売業者である被告人がこれを販売ルートにのせることが当然に予定されているのであるから、「龍村平蔵製」を織り込んで袋帯の製織を完了して商品が製造された段階ですでに、袋帯等について「龍村平蔵製」(縦書き)の商標権に基づき、またその譲渡後はその通常使用権を有して袋帯等の製造、販売等をしている株式会社龍村美術織物が、その営業上の利益を害せられる虞れのあるところの、類似商標の使用による他人の商品と混同を生ぜしめる行為としての構成要件が充足され、既遂に達したものと解するのが相当である。所論は採りえない。

なお、所論は、控訴趣意書補述書の論旨第三点中において「龍村平蔵製」の袋帯の周知性、混同性につき原判決を攻撃するけれども、この点に関する原判決の認定事実、説示に所論の瑕疵は見当らない。

その他記録を精査し当審における事実調の結果を検討するも、原判決には不正競争防止法五条二号、一条一項一号の規定に違反する罪の成立を認めた点につき、所論の意味における法令解釈の誤りは認められない。

次に職権をもつて案ずるに、原判決はその別紙犯罪行為一覧表(別紙(二)参照)第一および第二の一ないし四の被告人が山内正博と共謀のうえ、または単独で袋帯合計約一四〇本について、各製織者を用いて商標として右から横書きで「龍村平蔵製」と織り込んだ行為を、商標法三七条五号にあたる指定商品について他人の登録商標に類似する商標の使用をし又は使用をさせるために右登録商標に類似する商標を表示する物を製造した行為と解釈し、また右一覧表第二の七の被告人が袋帯「四天王文棋」に商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を織り込んだもの(前記の如く縫い込みの誤りである)一本を後藤直平に有償譲渡した行為を、商標法三七条四号にあたる指定商品について他人の登録商標に類似する商標の使用をさせるために右登録商標に類似する商標を表示する物を有償譲渡し引渡した行為と解釈し、その法令の適用において、それぞれ商標法三七条五号、および四号を適用し、その罪となるべき事実中の構成要件にあてはめて法律的に構成された事実として、『前記「龍村平蔵製」(縦書き)(第二九二五四四号)又は「龍村製」(縦書き)(第三一九二四二号)と類似の商標である「龍村平蔵製」又は「龍村製」(いずれも右からの横書き)(龍村製は相被告人山内正博の単独犯行の分である)の商標を、袋帯合計約一五四本(うち約一一本は相被告人山内正博の単独犯行の分である)について、自己が刺しゆうで縫込み又は織込み附して前記登録商標に類似する商標を使用し、若しくは前記登録商標に類似する商標の使用をさせるために登録商標に類似する商標を表示する物を有償で譲渡し引渡し、又は前記登録商標に類似する商標の使用をし又は使用をさせるために前記登録商標に類似する商標を表示する物を自己が織り若しくは前記一覧表記載の製織者らをして織らしめて製造し、もつて右株式会社龍村美術織物又は右有限会社龍村本社のための商標権を侵害するとともに、右株式会社龍村美術織物の製造、販売する「商品ト混同ヲ生ゼシムル行為」をしたものである。』と判示し、その犯罪行為一覧表においても別紙(二)の如く判示しているが、商標法三七条四号に規定する譲渡等の対象となる「商標を表示する物」は、指定商品等自体ではなく、例えば包装紙、ラベルのような商品に使用するための物であり、同条五号に規定する製造等の対象となる「商標を表示する物」も右同様であつて、右一覧表第一および第二の一ないし四の袋帯合計約一四〇本について、指定商品である袋帯自体に商標として右から横書きで「龍村平蔵製」と織り込む行為は、同法二条一項、三項一号に定める商品に標章を附して商標を使用する行為で同法三七条一号に規定する指定商品についての登録商標に類似する商標の使用に該当し、右一覧表第二の七の被告人が袋帯に商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を縫い込んだもの(織り込みは誤り)一本を後藤直平に有償譲渡した行為も、同法二条一項、三項二号に定める商品に標章を附したものを譲渡して商標を使用する行為で、同じく同法三七条一号に規定する指定商品についての登録商標に類似する商標の使用に該当するのに、これらについて同法三七条五号および四号に該当するものと解釈・適用し、罪となるべき事実をその構成要件にあてはめて法律的に構成された事実として判示した原判決には、法令の解釈・適用を誤り、ひいて事実の誤認があるといわなければならず、その誤りは原判示事実の大部分につき存するのであるから判決に影響を及ぼすこと明らかであるというべきであり、原判決は破棄を免れない。

よつて、爾余の論旨(量刑不当の主張)に対する判断を省略し、刑訴法三九七条一項、三八〇条、三八二条により原判決を破棄したうえ、原審における訴因により直ちに判決をすることができるものと認められるので、同法四〇〇条但書によりさらに判決する。

(罪となるべき事実)

被告人は京都市北区紫野石龍町五番地に工場店舗を置き、袋帯等の製造販売の業を営むものであるが、別紙(三)の犯罪行為一覧表記載のとおり、原審被告人山内正博と共謀のうえ、または単独で、昭和三九年一月ころから同四三年九月二八日ころまでの間、出機(でばた)(紋紙、原料の糸等一切の提供を受け、製品を納入して賃料を貰う形態)である同市上京区新町通寺ノ内上る三丁目大心院町二七番地木村伊三郎方などにおいて、犯意を継続し、かつ営業として、不正の競争の目的を以つて、かねて指定商品被服等に付する別紙(四)の商標「龍村平蔵製」(縦書き)につき、龍村平蔵が昭和一二年八月一一日商標権の設定の登録を受け、株式会社龍村美術織物が右平蔵からの譲渡により同三二年四月一八日商標権の取得登録を受け、同年一二月五日商標権の存続期間更新登録(更新登録の出願は同年五月九日)を受け、有限会社龍村本社が右株式会社からの譲渡により同四一年八月三日商標権の取得登録を受け、右株式会社が右商標の通常使用権につき昭和四一年九月一日許諾を受け、同四三年五月一五日その設定登録を受け、同会社が製造、販売する袋帯などに使用される商標として一般顧客の間に広く認識されている商標である前記「龍村平蔵製」(縦書き)(商標第二九二五四四号)と類似の商標である「龍村平蔵製」(右からの横書き)(その一例別紙(五)のとおり)の商標を、右一覧表第一および第二の一ないし四記載の如く、製織者らを用いて製織した袋帯約一四〇本に同製織者らを用いて織り込み使用し、同表第二の五、六記載の如くかねて自分のところで製織した袋帯二本に自己が刺しゆうで縫い込み使用し、同表第二の七記載の如くかねて製織し右商標(右から横書き)を附していた袋帯一本を後藤直平に有償譲渡(販売)して使用し、もつて、他人の登録商標の指定商品にあたる袋帯合計約一四三本について、その登録商標に類似する商標を使用して右株式会社龍村美術織物、その譲渡後は、有限会社龍村本社が相継いで商標権を有し、右株式会社龍村美術織物が商標の通常使用権を有する他人の商標権を侵害するとともに、他人の商品たることを示す表示と類似のものを使用しまたはこれを使用したる商品を販売して右株式会社龍村美術織物の製造(製織)、販売する商品と混同を生ぜしめる行為をしたものである。

(証拠の標目)(略)

(法令の適用)

商標法違反の点につき、商標法七八条、二条一項三項三七条一号(包括一罪)。

不正競争防止法違反の点につき、同法五条二号、一条一項一号(包括一罪)。

右両法違反の各点につき、昭和四七年法律第六一号による改正前の罰金等臨時置措法二条一項(刑法六条、一〇条により)(なお、別紙(三)の犯罪行為一覧表の第一の点につき刑法六〇条)。

観念的競合の処理 刑法五四条一項前段、一〇条(商標法違反の罪の刑に従う)。

刑種選択 懲役刑選択。

刑の執行猶予 刑法二五条一項。

没収 刑法一九条一項二号、二項。

訴訟費用の負担 刑訴法一八一条一項本文。

(弁護人の主張に対する判断)

所論の可罰的違法性がないとの主張については、その根拠のないことは、前記控訴の趣意に対する判断において説示したとおりであり、本件犯行の態様、期間、数量、同種前科もある累行性にかんがみると、可罰的違法性がないとはいえない。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢島好信 吉田治正 朝岡智幸)

別紙(一)

昭和五〇年五月一四日付請求の予備的訴因

一、公訴事実

被告人河崎初三は京都市北区紫野石龍町五番地に、被告人山内正博は同市上京区御前通今出川上る二丁目北町六三八番地にそれぞれ工場店舗をおき、いずれも袋帯等の製造販売業を営むものであるが、被告人両名は、別紙犯罪行為一覧表記載のとおり、単独もしくは両名共謀のうえ、昭和三九年一月ころより同四三年一〇月末ころまでの間、同市上京区新町通寺の内上る三丁目大正院町二七木村伊三郎方などにおいて、不正競争の目的をもつて、株式会社龍村美術織物が製造販売する袋帯などに使用される商標として一般顧客の間に広く認識されており、且つ昭和四一年八月二日までは株式会社龍村美術織物が被服等の指定商品につき登録し、同月三日からは有限会社龍村本社が登録し右株式会社龍村美術織物に使用させている縦書きの「龍村平蔵製」および「龍村製」の商標と類似する横書きの「龍村平蔵製」あるいは「龍村製」の商標を、袋帯合計約二八五本に織り込むなどして使用したうえ、右商標を使用した袋帯合計九本を後藤直平ほか一名に販売し、もつて右株式会社龍村美術織物の製造販売する商品と混同を生ぜしめるとともに、他人の登録商標と同一の商標を同一の商品に使用して商標権を侵害したものである。

二、罪名および罰条

不正競争防止法違反 同法一条一項一号、五条二号

商標法違反     同法七八条

別紙(昭和五〇年五月一四日付請求の予備的訴因の別紙)

犯罪行為一覧表

番号

被告人

商品名

(冒用商標)

製造(商標織込)

販売

備考

年月日

(ころ)

場所

製織者

数量

年月日

場所

相手方

数量

1

河崎

袋帯等

「四天王文棋」等

(龍村平蔵製)

39・1

41・12

京都市上京区新町通寺ノ内上ル三丁目大正院町二七

木村伊三郎方

木村伊三郎

約二〇本

2

河崎

袋帯

「大牡丹印金」等

(龍村平蔵製)

39・1

41・10

同市北区紫野中柏野南町九

中元樹四郎方

中元樹四郎

一七〇本

3

河崎

袋帯

「大牡丹印金」

(龍村平蔵製)

39・2

40・4

同区紫野石龍町四九

宮部初太郎方

宮部初太郎

約一〇本

4

河崎

袋帯

「大牡丹印金」

「威毛錦」

(龍村平蔵製)

41・8

41・12

同市上京区御前通今出川上ル二丁目北町六三八

株式会社山内機業店

槇野博久

約三〇本

5

河崎

山内

(共謀)

袋帯

「大牡丹印金」

「威毛錦」

(龍村平蔵製)

40・11

41・4

右同番地

山内正博方

槇野博久

約四〇本

6

河崎

袋帯

「天平狩猟文」

(龍村平蔵製)

42・10

同市北区紫野石龍町五の二

河崎初三方

一本

42・10

同上

後藤直平

一本

刺しゆうで商標を縫込む

7

河崎

袋帯

「豊公芒文錦」

(龍村平蔵製)

43・6

下旬

同右

一本

43・6

下旬

同上

同右

一本

同右

8

河崎

袋帯

「四天王文棋」

(龍村平蔵製)

43・9・28

同右

同右

一本

かねて製造していたものを販売

9

山内

袋帯

「宝鏡唐草文」

(龍村平蔵製)

42・10

43・2

前記山内機業店

四本

43・2・13

同上

同右

一本

四本製造し、一本販売

10

山内

袋帯

「大牡丹印金」等

(龍村平蔵製)

43・6・19

同市北区紫野今宮町

今宮神社

斎藤泰男

三本

かねて製造していたものを販売

11

山内

袋帯

「四天王文棋」

(龍村製)

43・8中旬

43・10末

前記山内機業店

八本

43・9

同上

後藤直平

一本

八本製造し一本販売

12

山内

袋帯

「羊花堆朱錦」

(龍村平蔵製)

43・2

同右

一本

43・2

同上

同右

一本

別紙(二)

原判決添付の犯罪行為一覧表

番号

被告人

A 他人の登録商標に類似する商標の使用をし又は使用をさせるために右登録商標に類似する商標を表示する物を製造した行為

B 他人の登録商標に類似する商標を附して使用した行為

他人の登録商標に類似する商標の使用をさせるために右登録商標に類似する商標を表示する物を有償譲渡し引渡し(販売し)た行為

商品名

日時

(昭和年、月、日ころ)

場所

製織者又は製縫者

態様

数量

日時

(昭和年、月、日ころ)

場所

相手

商品名

態様

数量

第一

両名共謀

袋帯

「大牡丹印金」

「威毛錦」

四〇、一一から四一、四までの間継続

京都市上京区御前通今出川上る二丁目北町六三八番地被告人山内の当時の工場

槇野博久

(織工)

A 商標として、右から横書きで「龍村平蔵製」を織込む

約一二本

第二

河崎

袋帯

「四天王文棋」

「かな六歌仙」

「彩艶雅集」

「甲比丹相良」

「甲比丹仙瓢」

三九、一から四一、一二までの間継続

同市同区新町通寺ノ内上る三丁目大心院町二七番地木村伊三郎方

木村伊三郎

(出機)

右同

約八本

河崎

袋帯

「大牡丹印金」

「大祝矢」

「名月桜」

「中牡丹」

「遠州」

三九、一から四一、一〇までの間継続

同市北区紫野柏野南町九番地 中元樹四郎方

中元樹四郎

(出機)

右同

一〇〇本

河崎

袋帯

「大牡丹印金」

三九、二から四〇、四までの間継続

同市同区石龍町四九番地 宮部初太郎方

宮部初太郎

(出機)

右同

約一〇本

河崎

袋帯

「大牡丹印金」

「威毛錦」

四一、八から同、一二までの間継続

同市上京区御前通今出川上る二丁目北町六三八番地 株式会社山内機業店

槇野博久

(織工)

右同

約一〇本

河崎

袋帯

「天平狩猟文」

(昭和四四年押第三二号の二七)

四二、一〇

被告人河崎の肩書住居

自己

B

商標として、右から横書きで「龍村平蔵製」を刺しゆう縫込む

一本

河崎

袋帯

「豊公芒文錦」(前同号の二六)

四三、六下旬

右同所

自己

右同

一本

河崎

四三、九、二八

被告人河崎の肩書住居

後藤直平

袋帯「四天王文棋」に商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を織込んだもの一本

第三

山内

袋帯

「宝鏡唐草文」

(前同号の八)

四二、一〇から四三、二までの間継続

前記株式会社

山内機業店

自己

A 商標として、右から横書きで「龍村平蔵製」を織込む

約二本

四三、一、一三

同上所

右同人

上記のうち一本

山内

四三、六、一九

京都市北区紫野今宮神社

中村吉隆を介し斎藤泰男

袋帯「大牡丹印金」「彩紬牡丹文」(前同号の三)、「ペルシヤ狩猟文」にいずれも商標として、右から横書きで「龍村平蔵製」を織込んだもの三本

山内

袋帯

「羊花堆朱錦」(前同号の二八)

四三、二

前記株式会社

山内機業店

自己

A 商標として、右から横書きで「龍村平蔵製」を織込む

一本

四三、二

右同所

後藤直平

同上一本

第四

山内

袋帯

「四天王文棋」

(前同号の二二)

四三、八から同、一〇末までの間継続

右同所

山内鉄蔵

(織工)

A 商標として、右から横書きで「龍村製」を織込む

五本

四三、九

右同所

右同人

上記のうち一本

以上

別紙(三) 犯罪行為一覧表(当審認定の罪となるべき事実分)

番号

単独共謀の別

製織商品名

日時

昭和年月日ころ

場所

製織者又は製縫者

商標

使用

態様

数量

日時

昭和年月日ころ

場所

相手

商品名

態様

数量

第一

山内正博と共謀

袋帯

「大牡丹印金」

「威毛錦」

四〇、一一から四一、四までの間継続

京都市上京区御前通今出川上る二丁目北町六三八番地

被告人山内の当時の工場

槇野博久

(織工)

A

商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を織り込む

約一二本

第二

単独

袋帯

「四天王文棋」

「かな六歌仙」

「彩艶雅集」

「甲比丹相良」

「甲比丹仙瓢」

三九、一から四一、一二までの間継続

同市同区新町通寺ノ内上る三丁目大心院町二七番地

木村伊三郎方

木村伊三郎

(出機)

右同

約八本

単独

袋帯

「大牡丹印金」

「大祝矢」

「名月桜」

「中牡丹」

「遠州」

三九、一から四一、一〇までの間継続

同市北区紫野柏野南町九番地

中元樹四郎方

中元樹四郎

(出機)

右同

約一〇〇本

単独

袋帯

「大牡丹印金」

三九、二から四〇、四までの間継続

同市同区石龍町四九番地

宮部初太郎方

宮部初太郎

(出機)

右同

約一〇本

単独

袋帯

「大牡丹印金」

「威毛錦」

四一、八から同一二までの間継続

同市上京区御前通今出川上る二丁目北町六三八番地

株式会社山内機業店

槇野博久

(織工)

右同

約一〇本

単独

袋帯

「天平狩猟文」(昭和五一年押第一四号の二七)

四二、一〇

被告人河崎の肩書住居

自己

B

商標として右から横書きで「龍村平蔵製」を刺しゆうで縫い込む

一本

単独

袋帯

「豊公芒文錦」(前同号の二六)

四三、六下旬

右同所

自己

右同

一本

単独

四三、九、二八

被告人河崎の肩書住居

後藤直平

袋帯「四天王文棋」に商標として、右から横書きで「龍村平蔵製」を縫い込んだもの一本を有償譲渡(販売)

別紙(四)、(五)(略)

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